ユニバース倶楽部のAtoZ F AV女優 ②幸(みゆき)の場合

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① 幸(みゆき)との出会い
待ち合わせは当時の定宿だった銀座のホテル。
食事の前にロビーで簡単な自己紹介をするのがジョーのスタイルだ。
倶楽部ネームで自己紹介することはほぼなく、本名を名乗る。だってこの後のお店も本名で予約しているから隠しても意味がないから。
一方で女性の反応はマチマチだ。
洗練された付き合いができないジョーだが流石に初対面で本名を聞いたりはしない。でも本音をいえばせめて倶楽部ネームではないファーストネームで呼びたいとは思う。実際この時点でファーストネームを教えてもらった方がその後の付き合いもうまく行く気がしている。まあ、気がするだけですけど。
さて幸(みゆき)の場合だ。ジョーの自己紹介を受けて、「漢字一字、幸と書いてミユキです。私も名前で呼ばれたいかも」と幸(みゆき)。
名は体を表すから両親の深い愛情を受けて育ったのは疑いようがない。
実際、絵に描いたような清楚な女性で(すぐにその印象は大きく崩されるのだが)育ちの良さが溢れ出している美しい女性だった。
当然?ブラッククラス。その中でもなかなかお目にかかれない女性だというのが第一印象だった。事前のリクエストに応じてホテル近くの鉄板焼き屋にエスコートした。カウンター席をメインとするお店でそれまでも何度か使ったことがある。
初対面でも当たり障の無い話ならカウンター席でも問題がないというのがジョーの考えだが、幸(みゆき)の告解(としか思えなかった)は当り障りしかなかった。どうしてそんな流れになったか、全く思い出せないが、罪の告白に耳を傾ける神父のような気持ちになった事を覚えている。
幸(みゆき)の告白は高校時代の処女喪失から始まって(彼氏がいたが、彼氏が童貞ではないのを知ってナンパされた行きずりの男性に処女を捧げた)大学入学と同時に年齢を偽ってのソープデビュー、それに続くAVデビュー、そして親バレまでの一連の流れをボルドー産赤ワインとA5神戸牛を味わいながら一気にまくし立てた。
よくある話では決してないが、めちゃくちゃ珍しい訳ではないだろう。ただ告解場所としてカウンター席は目の前に料理人がいるからふさわしくはない。
それなのに幸(みゆき)は決して躊躇しなかったし、ジョーの方も神父気取りで話に耳を傾けた。幸(みゆき)は「ジョーさんになら何でも話せそうな気がする」と言い、神父気取りのジョーもその位置に満足していた。外面のいい、ジョーらしい反応だが、今から考えると神父役のオトウサマはジョーだけではなかっただろう。
②親バレした後の続きはカフェに移動して聞いた。
幸(みゆき)の両親は赤門出身の研究者だ。特に父親の方は医療関係だから専門家に知り合いがたくさんいる。自分の娘 がソープ嬢でAV女優であったことには相当のショックを受けただろう。
しかし幸(みゆき)と名付けた娘を救い出したいという気持ちの方が勝って、友人でもある精神科医に判断を仰いだ。
その精神科医は「脅迫的性行動が認められ、性的衝動のコントロールが困難」という診断を下した。問題は治療方法だが、相談の結果通っていた大学を休学した上で、某国にある施設に半年間入所し、治療をすることになった。少し時間はかかったが語学研修のビザが下り、幸(みゆき)は半年間その国で過ごした。
施設は街の中心から車で1時間の片田舎にあり、午前中語学研修を受け、午後からは農作業、他の入居者との交流会が基本的なスケジュールだ。食事は交代で入所者が用意する。この経験が契機となって、その後幸(みゆき)は料理の道へと進んでいく。
性的な事柄を除けば、幸(みゆき)は真面目で何事も一生懸命に取り組む性格だ。両親のように赤門出身ではないが、Wではない方の大学付属高校をトップクラスの成績で卒業した。帰国後に復学した大学の卒業論文は学部長賞を受けている。
期限は半年だったから、語学と料理に関しては大きな成果を得て、帰国した。しかしながら結論から書けばその後の経過からみて治療の点では成功したとは言い難い。
それでも入所していた半年間、誰ともセックスをしなかったし、性衝動もほぼ起こらなかったそうだ(性衝動を抑える薬を服用していた)。
③帰国後の幸(みゆき)
帰国後はしばらく、父親の秘書役をし、前述したようにセックスのない生活を送っていた。その後料理の道へと進む決意をしたので、秘書役をやめ、某有名イタリアンレストランに父親の紹介で入店した。
オーナーシェフは昭和の料理人だから、パワハラの日々だった。しかしありがちなセクハラの方はなかったし、徐々に任されることの段階が上がっていったから、幸(みゆき)の生活は忙しくも充実していた。しかもこのレストランでセカンドを務めていた料理人と彼氏彼女の関係になった。穏やかな落ち着いた生活が続き、帰国後初めてセックスしたのもその彼だった。幸(みゆき)によれば、それは素晴らしいセックスでいわゆるハメ潮を初めて経験したのもこの時だった。
半年間性衝動を押さえ込んでいたので、その反動は大きかったが、彼もまた幸(みゆき)の要求に応え続けた。そういう意味でも相性バッチリの二人だったのだろう。
③そうは問屋はおろさない
これでめでたしめでたしになってもおかしくなかったし、幸(みゆき)もまた、彼との結婚を強く望んでいた。
しかしそうは問屋はおろさないのが、世の中というものだ。
独立を視野に入れて有名店のセカンドとして腕を振るっていた彼だが、昭和型の親方もその実力を認め、自分の修行先(イタリア北部)に彼を派遣したのだ。彼としてはまたとないチャンスで、とりあえず半年間ということだったが、場合によってはそれ以上の期間も視野に入れていた。
当然幸(みゆき)は一緒に行きたがったが、親方が許さなかったし、彼氏の方も「限られた時間だから料理に集中したい」ということで、幸(みゆき)の同行を拒否したのだった。
幸(みゆき)は相当抵抗したようだったが、彼の決意は固く、イタリアへ同行することは諦めざるを得なかった。その結果彼氏によって満たされていた幸(みゆき)の性衝動は爆発することになったのだった。
④宇宙倶楽部入会
にわかには信じ難いが幸(みゆき)は入会半年で150件のオファーを受けたそうだ。
それが150件なのか、延べ人数なのかはわからない。ただ「1日で3人のオトウサマに会った事もあった」と言っていた。
ジョーと初めてあったのは入会から半年が過ぎ、オファーが少し落ち着いた時期だったようだ。前述したように幸(みゆき)からの告解を受けて神父気取りだったジョーはアレコレと聞き出していた。一番記憶にあるのは「オトウサマ手帳」だ。オファーを受けたオトウサマの一覧で、名前や待ち合わせの場所、お手当の金額などが、書き込まれていた。備考欄がユニークで「早漏、楽」とあったり逆に「ベッドヤクザ、潮吹き、失神」とあったりして興味が尽きない。
恐ろしてくて聞いたことはなかったが、ジョーの備考欄には何と書いてあったのだろうか。
⑤神父ごっこは続く
彼女に会うときはまず、その告解に耳を傾けなければならない。幸(みゆき)はほぼ毎日誰かとセックスをしていた。完全に治療前の状態に戻っていた。
ただ違うこともあった。それは外国での治療を勧めた主治医とは繋がっていたことだ。特別な治療があるわけではないが、毎週幸(みゆき)はレポートを主治医に送り、主治医はそのレポート読んで、二、三のアドバイスを返信した。
そして前述した告解に耳を傾けるとはこのレポートの全てにジョーが目を通すことだ。必ずしも楽しいレポートではない。なぜってそれだけ幸(みゆき)のセックスライフは乱れていたから。同時に効果のほどは疑問だけれども、仕事とはいえ、精神科医って大変だなあと思ったものだった。
このまま幸(みゆき)とはセックスしないのかなあという予感がしたが、ジョーの予感ほど当たらないものはないから
時間はかかったがベッドインすることになった。大阪、札幌、沖縄への旅に出たから流石の?ジョーも辛抱たまらん状態になる。
お互いのことは十分過ぎるほど話していたからこの段階でジョーの性癖を理解していた幸(みゆき)はそのリクエストのほぼ全て受け入れてくれた。もちろん官能的で目眩く時間だ。文字通り、病的なほどに。
でも幸(みゆき)が嬌声を挙げるたびに、この状況をどんな表現でレポートするのだろうと考えるとプレイに没頭できなかった。と同時にユリの場合と同じく、アブノーマルなプレイが幸(みゆき)の病状を悪化させているのでは?という考えも完全に打ち消すことはできなかった。
彼氏が予定より半年遅れて1年間の海外修行から帰国したこともあって、自然と距離ができ、特に示し合わせたわけではないけれど、お互いはっきりと告げないままフェイドアウトしたのだった。
⑤突然のLINE
約2年の音信不通を経て幸(みゆき)からLINEがきた。
宇宙倶楽部女子からのこういうLINEは要するにお金の無心であることが多い。果たして幸(みゆき)のLINEもそうであったが、少しだけ捻り?も効いていた。
まずは件の彼氏と結婚したこと。そしてここからが本題なのだが、その彼氏が独立に向けて準備しているが、開業資金が足りないから援助して欲しいとのこと。これだけなら簡単な返信だけして断るところだが、ジョーの心を見透かしたように幸(みゆき)は次のような提案をしてきたのだった。
「いま働いているお店の定休日に彼が料理教室を開きたいと言っています。言いにくいけれど、受講料は1回10万で、3ヶ月かけて10回。お店のスペースと必要な資金を考えて5人ほど募集しようと計画中です。ジョーさんは料理に興味があるし、顔も広いから5人集められないかな?」
ジョーは決して顔は広くないが、顔が広い人は知っている。そう、オサムくんだ。そこで外面のいいジョーは幸(みゆき)に代わってオサムくんを説得したのだった。
幸いなことにオサムくんの方も興味を持ってくれて、すぐに5人どころか10人を集めた。「2部制にして資金倍集めましょう」というのだ。この辺り、オサムくんは抜け目がないというか、頼りになるというか、とにかくデキル後輩ではある。
⑥崇(たかし)のクッキング教室
とんとん拍子に話が進んで、幸(みゆき)の夫である崇(たかし)の料理教室が開催されることになった。参加した10人のうちジョーとオサムくんを除いて全員が料理人の卵で、要するにプロである。考えていたのとは全く違う内容で、レベルも高く、基本的な料理技術はあまり教えてもらえなかった。
それでもジョーは一度料理をきちんと習いたいと思っていたから落伍することなく必死についていき(復習は欠かさなかった)、10回コースを完走した。料理のレベルが格段に上がったかといえば、心もとないが、丁度還暦を迎えたときだったし、若い意欲のある料理人に囲まれて学べるのは刺激的な時間となった。
ジョー以上に意欲的だったのはオサムくんで、崇(たかし)先生を驚かせるほどの上達ぶり。新妻に美味しい料理を食べさせたいというモチベーションの高さも手伝って、そこら辺の料理人には負けないくらいのレベルになった。
一方でジョーは手先がそれほど器用ではないし、オサムくんほどの動機もないから味に関しては妻がちょっとだけ驚く位のレベルにしかならなかった。でもとっても楽しかったし、料理に興味を持つことで家事全般に興味を持つようになった。
崇(たかし)先生から料理に関しての最大の学びは手順の重要さだ。それは後片付けも含まれ、要するに全てのものを事前に用意し、次につながるようきちんと始末するということだ。これは全ての事柄に通じる。
前述したように丁度還暦を迎えた頃で、何か新しいことを始めたいと思っていたし、残りの人生の生き方について考えることが多くなっていた。
多分ベストタイミングだったのだろう。料理を学ぶことでインスパイヤーされ、今まで妻任せだった自分の生活を振り返って、最低限、身の回りのことを自分でしようと決意?した(レベルが低くてごめんあそばせ)。
善は急げとばかり、少なくとも自宅にいるときは(月に10日程度ですけど苦笑)料理だけでなく、家事全般(掃除、洗濯、タダシ、洗濯物をたたむのは苦手)をするようになった。ジョーの変身ぶりに最初は訝しがっていた妻もうれしい悲鳴?をあげた。
家事をある程度本気でやろうとすると中々忙しい。5時半起床で、眠け覚しとストレッチを兼ねてリビングにクルクルワイパーをかける。
食卓のテーブルなどをふき、トイレ掃除。余裕があれば書斎の整理をする。手際がいいとは言えないので、ここまでで1時間以上かかる。
そして徐に朝食の用意(イージーメニューですけど)をし、基本妻と食べる。食後はお茶を丁寧に入れて妻の話を聞いているフリをしながらゆっくりと飲む。当然ながらフリがバレないように時々相槌を打つのを忘れないのは大切だ。お茶を飲み終わったら、洗濯機を回し、そして干して一段落がつく。妻が望めば近所のアトリエに出掛ける前に昼食用のお弁当を用意することもある。
ここでようやく?自分自身の仕事となり、多くの場合、メールチェックとリモート会議で仕事を始めることが多い。
⑥出産そして開店
料理教室が契機となって幸(みゆき)とのやり取りが復活した。毎週LINEが来るようになったのだ。そして幸夫婦は怒涛の数年を過ごすことになる。
1まずは赤ちゃんを授かり、男の子が生まれたこと。
2オープン間近になって何と親方から茶々が入り、嫌気がさした崇(旦那)はイタリア料理を断念して日本料理店を再計画したこと。
3東京ではなく幸(みゆき)の両親の故郷にオープンしたこと。
そして開店から半年が過ぎ、運営が落ち着いた頃、招待されオサム君と二人で当地へ飛んだ。お店は市内中心からは少しはずれたところにあり、アクセスがいいとは言い難いのに、すでに一定の評価を受けている。
思いの外小さな店で、カウンター8席と二階に10人が座れる個室の構成。細部まで目の行き届く規模だと思う。高級感があり、シンプルなそれでいて上品な店構だ。入店する前から美味しいを予感させる店でもある。おそらく外観や内装には幸(みゆき)の意見も入っているのだろう。
新しくオープンした店にはイタリアン時代の後輩二人が崇に付いてきた。それが親方とトラブルになった原因の一つだが、人望の高さの証左でもある。3人ともイタリアン出身でユニークな日本料理店だと思った。
先付けから始まるコースは伝統的な懐石料理の文法法則に則っているが、所々でイタリアンテーストが感じられる。例えばコンソメで炊いた野菜類や箸休めの一口サイズのトマトパスタなど、良いアクセントになっていると思った。
オサム君も大喜びで、箸とお酒が進む。デザートまでまあまあの量を完食。これからもっと内容的にも洗練されて行くだろう。
そろそろお暇しようとしたところへ幸(みゆき)が赤ちゃんを抱いて登場。少しふっくらして(生まれたときは4,000gオーバー)玉の様なという形容がピッタリの男の子だ。
物怖じしない子で愛嬌たっぷりでもある。お祝いの言葉をかけ、しばらく親バカエピソードに花が咲く。紆余曲折があり、まだ薬は飲み続けているとのことだったが、昔に比べたら幸(みゆき)の病状は安定したそうだ。要するに性衝動が抑えられずに軽はずみな行動はしないということである。病状が安定したのは崇という最高の伴侶を得た結果なのだろう。
店を出た後は、オサム君とコースの内容について感想を言い合った。普段は手厳しいオサム君だが合格点を出し、「飛行機代出しても行く価値ありますね」という言葉で締めた。ジョーも同感だ。と同時に両親と同じく名が漢字1文字の男の子のことを考える。こんなときジョーがいつも口ずさむ愛唱歌を心の中で繰り返した。
♫丸い地球の水平線に何かがきっと待っている。
苦しいこともあるだろさ、悲しいこともあるだろさ、だけど僕らはくじけない
泣くのはイヤだ、笑っちゃおう! 進め!
幸(みゆき)が悩み苦しんだように、彼にも困難が待ち受けているだろう。しかしずっと立ち止まることはない、立ち向かい、そして進んで行くだろう。
そうなのだ、名は体を表す。お母さんが、そしてお父さんがそうだったように。
柄にもなくそんなことを考えながら、セフレの待つスナックのドアを叩いたジョーだった。
そしていつものように最高の手コキを味わい、身も心も軽くなった。







