ユニバース倶楽部のAtoZ E AV女優 ①ユリの場合

AV女優
宇宙倶楽部女子のプロフィールでは職業欄に「AV女優」と記されていることがある。しかし昔に比べると
その割合は減ったような気がする。と同時に隠れAV女優とでも言うべきかプロフィールに記載のない女性は今でも少なくないと睨んでいる。と言うのもジョーは過去に7人ほどAV女優を引き当てたことがあるが、全員プロフィールにはその記載がなかった。容姿その他が好みだったから、オファーしたのだけれど、もし、プロフィールにAV女優とあったら躊躇したことだろう。
もちろんAV女優といってもピンキリで、少なくとも現在は著名度が高い女性が登録しているとは思えない。しかし過去にはファンクラブを持つ程度?の女優はそこそこいたようだ。一方で今でも売れない、或いは限られた活動をしている女優ならば一定数登録されているのではないだろうか。そこで今回はジョーが引き当てた?な7名のうち、二人をピックアップして、2回に分け、その悲喜交々を綴っていこう。
ユリの場合
かなり前のオファーだから出会いの詳細は思い出せないことも少なくない。
おそらく待ち合わせ場所は当時の定宿であった銀座のホテルだったはずだ。
一方で案内したレストランははっきりと覚えている。それは亡き母が愛したセンチメンタルな思い出が満載のロシア料理屋だ。
そしてユリのお召し物は白の胸が大きく開いたタイトなワンピースだった。
ユリは特別美人ではないが、肉感的で派手な顔立ち、要するに其の魅力がわかりやすい女性でもある(好みは分かれるだろう)。
プロフィールに「お話好き」とあったが、その通りで、饒舌なおかつ快活で最初から話は弾んだ。
少食(これが後に問題を引き起こした)だけれど、お酒は好きというので、亡き母も愛したザクスカとラムチョップでお酒を楽しんだ。
ビールから始まり、グルジア産の赤、最後はウオッカ。
ジョーはお酒は好きだけど、強くはないので、チャンポンをすると呂律が廻らなくなるが、この日はクワスをチェーサーにして少しずつゆっくり飲んだので、正体を失うことはなかった。
ご存知のように?ジョーは洗練された付き合いのできない人間である。だから初対面の時の話題は慎重に選択するよう心がけている。
そして困ったときには「芸術、美術好きアピール」に限る(苦笑)。
ましてユリはプロフィールに「美大卒」とあるから、その方面の話題で、ジョーの七癖を隠そうという作戦だ。
果たしてユリから「好きな画家は?」というジョーにとっては真ん中高め、要するに絶好球の質問がきた。普段なら思いっきりレフト方向に引っ張る所だが、何といっても美大卒のユリが投げた球である。「ポール・セザンヌ」などと面白くとも何ともない回答をして折角の絶好球を打ち損じたくない。そこで力を少し抜いて、センターから右を目掛けて打ち抜いた。
「グスタフ・モロー」
ユリが大袈裟に驚いてみせる。「えっ⁉︎ジョーさん、モローがお好きなんですか!一番好きな画家なんです。仲良くなれそう」
ビンゴー!!これで今夜の成功、いや性交が決定したのだった。ありがとうモロー!
要するにモローのおかげで?ユリとの距離は一気に縮まったのだった。
ジョーはタイプに関わらず、初回は食事だけのことが多いけれど、この日は速攻で宿泊先のホテルへと直行した。ベッドの中では携帯内にダウンロードされた彼女の作品を鑑賞しながらことに及んだので、早い段階で、そこそこ売れっ子のAV女優であるとユリから告白されたのだろう。特に驚いたり、嫌な感じにならなかったのはユリは脱ぐと、ジョー好みの肉体の持ち主だったしジョーの拙い性技に対して素晴らしい反応を示してくれたからだ。
短い期間だったけれど、それからユリと濃密な時間を過ごすことになった。
ユリは性に対してメチャクチャアグレシッブで二人で相談しながら、いろんなシチュエーションを楽しんだ。
ジョーが会ったA V女優の多くは作品の中で試した状況を楽しめなくなる子が多かったが、ユリは例外で自作品をなぞりながらの設定に強い関心を示した。変態は変態を呼ぶので、ジョーの周りには男女を問わず変態に事欠かなかったから思いつくことはほぼ全て試した。

レズ
そんな中で、ユリが一番気に入ったっプレーがレズだった。当然?作品の中でも頻繁に女性同士の絡みはあったがそれまで一度もいいと思えなかったという。それがバイシェクシャルの女性に逝かせまくられ、新たな性に目覚めたのだった。
一方でジョーはあれこれと妄想を膨らませている時が一番楽しい。その妄想が目の前で繰り広げられると妄想していている時ほど楽しめなかったが、ユリが目の前で姿態を曝け出すのはやっぱり特別の時間だった。その幾つかのシーンは心に焼き付いていて、ふとしたキッカケでこあんなことやそんなことをアリアリと思い出すことがある。
ユニバース女子との付き合いではまずはエロが大きなウエイトを占めるだろう。ジョーのように性能力が高いと言えない場合でも、いやもしかしたらだからこそエロのウエイトはさらに大きくなるのかもしれない。少なくともジョーの場合はかなり歪んだ形であったが、ユリはよく付き合ってくれたと今更ながら思う。
と同時に刺激的なエロは飽きるのも早い。もしユリとの結びつきがエロだけだったら、交際が続くこともなかっただろう。前述したように美大卒で、好みの画家もかなりの部分で共通しいていたから二人で絵を鑑賞することは楽しみの一つだった。その後たとえばカフェで美術談義を交わしたのは今から考えると、至福の時間で、この時間を失ったことはエロい妄想を共有する時間を失ったよりも喪失感が大きい。ユリは幻想的で神秘的な絵が好みで、自分の好みを言葉を選びながら表現する能力は今から考えても稀有な才能だと思う。
もうユリに会うことはないだろうし、こうして書き出さなければ、思い出に耽ることもないが、改めて絵の鑑賞はジョーにとって大きな楽しみであることを知るのだった。
ユリとのもう一つの共通点は彼女が文学少女であることだ。しかも破天荒な人生を送っているユリなのに、読書傾向は至って正当で、要するに教科書に載るような小説家を好んだ。漱石よりも鴎外を高く評価し、その一方で漱石の弟子筋に当たる、内田百閒や芥川龍之介の小説、そして寺田寅彦のエッセイを愛読していた。特に芥川作品はほぼ読破したそうで、杜子春、蜘蛛の糸、芋粥、鼻、魔術などのマイナー作品を含めた教訓性の強い作品が好きなのはユリに似つかわしくないと思ったものだが、そんな意外性も彼女の魅力だったのだろうと思う。
さらにジョーを驚かせたのは、ユリが文学だけでなく、幅広いジャンルをカバーしていることだった。リベラルな書き手が好きで、鶴見俊輔が好みだと言っていた。ジョーが鶴見俊輔の著作を読むようになったのは間違いなく、百合の影響だ。
ユリから聞いたエピソードに次のようなものがある。
ユリはAV撮影合間は本を開くことにしている。それはスタッフ間の馬鹿話に入らないようにする工夫でもあった。しかし読んでる本が本なので監督やスタッフ、他の出演者を引かせるらしい。そりゃあ、そうだ、クンズホツレツの直前に「銃・病原菌・鉄」を熟読していたら何言っていいか分からんよね。
持ってるのに読まないのはサル以下
ユリはそんなスッタフを指差して「だからアイツら、サルなのよ」と言い放つ。しかしながら、撮影直前に名著の誉高い本をこれ見よがしに広げてみせるのは趣味が良くないとも言えるだろう。
ジョーはその本をいつか読みたいと思っていた。実際買ってもいたが大部であることもあって、その時点で読んでいなかった。それを知ったユリは「ジョーちゃんはサル以下ね」と言ったことを思い出す。頭にきたけれど、その後読破してみて「持ってるのに読まないのはサル以下である」というユリの意見には100%同意する。この本は地球と人類の歴史を詳述した本で、時に数千年万年以上の時間を行き来するダイナミックな視点を持つ。
ジョーからすると生き急いでいると見えるユリだからこそ、悠久の時間の流れに惹かれるのかもしれない。
その他にもユリの影響で読んだ本があるが、多くが哲学書で、どちらかというと倫理的側面を強調する本が多かった。控えめにいってもユリの生き方は倫理的とは言い難かったがジョーは矛盾した人間に惹かれる傾向があり、宇宙倶楽部を通じて知り合った女性の中でもその乖離が大きい部類の女性であった。
ジョーのオトウサマ活動はお江戸の出張中が中心で、多くはないけど、複数の女性がいたから、ユリとの逢瀬は月に1度か2度程度だ。それくらいのペースならジョーには負担が少なかったし、実は洗練されたお付き合いができないという本性が、比較的?バレにくかった。
しかしながら、ユリとの逢瀬は週単位で、時には連続してジョーの宿泊先にやってくることもあった。ユリはAV女優として超売れっ子というわけではなかったが、ファンクラブもあり、その他の活動も一時期は積極的に行っていたから忙しい日々を送っていた。仕事が終わり、日付が変わる頃にやってきて、翌朝早くに部屋を出ることもあった。
「無理しないで」と繰り返したけれど(今から思えばそれは自分自身に対する言葉だっただろう)ユリほど「ジョーちゃんにはいつでも会いたい」と言ってくれた女性はいなかったので、多分にリップサービスを含んでいるのを知りながらその言葉に甘えた。
何度も繰り返すけれど、ジョー自身は洗練された付き合いができないのだから、お互いのためにもその交際は慎重であるべきだと思っていた。
そして自分の良さは「エキセントリックさ」にあると思っている。これはよく言えば「常識に捉われない」だろうけれど、オトウサマ活動ではそれは「非常識」ということになるし、エキセントリックさを求める女子はほぼ皆無だろう。
皆無のはずの数少ない女子がユリで、だからこそ短い時間であったがお互い惹かれあったのだろう。
あっという間に距離を詰めると問題が発覚する時間も早くなるのかもしれない。
ユリは本人曰くかなり重篤な精神障害を患っていて大量の薬を処方されていた。不思議なことにジョーの前でそれらしき症状が出たことはなかった。ただ詳しくは分からないが、非常に強い薬で、処方できる病院は限られているし、持ち込めない国もあると言っていた(それで二人で計画した外国旅行ができなかった)。
前述したようにジョーはユリが言うような症状が出るのを見たことはない。薬が効き、症状を抑えていたのかもしれない。
ただし、強い副作用もあった。それは空腹を感じにくいということで、ある時期から一緒に食事を楽しめなくなった。それだけならまだ対処の方法があったかもしれないが、何か注文すると一口だけ食べてほとんどを残すのだ。ユリは「本当に美味しいものをちょっとだけが私のやり方」だと言った。
今から思うと彼女の病い?に寄り添うことはできなかった。もうちょっと対処の仕方があったかもしれない。しかしジョーは食べ物を残すことはいけないことだという教育を母から受けてきたし一時的であったがレストラン経営をしていた事もあり、ユリが平気で(とジョーには見えた)食べ物を残すことに対してはどうしても受け入れる事ができなかった。
結局この溝は埋まらず、二人の間に徐々に距離ができた。と同時にユリとのセックスはエキサイティング
ではあったし、僕の妄想を彼女も楽しんでくれたと信じたいが、ある時期から僕の妄想がユリの症状を悪化させているのではないかと思うようになった。とk
さらにユリのことを深く知るうち、成人になる前後、彼女の生活は乱れに乱れ、2度ほど自殺未遂をしたことを知った。
それは芥川について話している時のことで、彼が自殺したことは知っていたけれど、35歳で自殺したことは知らなかった。もうちょっと歳をとっていたと思い込んでいたのだ。だからジョーが思わず「そんなに若かったのか」と言ったが、ユリはジョーの言葉に珍しく強い調子で反論した。
「よく35まで生きたよ。もっと早く自分の人生を終わらせることもできたのに。苦しみながらも精一杯生きたのよ、芥川は」
芥川に対してそんな見方をしたことはなかったから、ユリの言葉が強く印象に残っている。これまた今にして思えばだが、ユリの芥川観は自分自身のことでもあったのだろう。だからジョーの言葉に強く反発したのだろう。
少しだけ後ろ髪を引かれたけれど、ユリとの付き合いは辞めることにした。それほど長い期間ではないけれど濃密な時間を過ごしたからLINEで別れを告げることはとてもできない。会えば一悶着ありそうだったし、うまく別れることができる自信はなかったけれど、自分の思いをあまりオブラートに包まずに告げた。
ユリはジョーの言葉を目をつぶって黙って聞いていたが、しばらく言葉を発しなかった。二人の間に沈黙が流れ、いたたまれない気持ちになったが、こちらはもう加える言葉もなかったから黙っていた。
予想された通り、別れるのは簡単ではなかったが、時間が解決しないことは少ない。
こうして書き出さなければ、このまま思い出すこともなかったかもしれない。宇宙倶楽部に入会して彷徨し続けているジョーだが、今回はっきりした事がある。それはジョーがここで求めているのはエロ、アート、そしてミールであることだ。なんだか簡単なようだけれど、なかなかうまくいかないんだよなあとため息をつきつつ、筆をおきたい。
次回はもう一人のAV女優、ミユキについて綴っていくことにしよう。








