遅漏を科学する

前回のコラム(射精するほど寿命は延びる?)で、「死亡率50%減 射精と寿命 必ず知っておいて」
https://www.youtube.com/watch?v=G67yOu2FEdM&t=318s
という泌尿器科の先生のYoutube動画を紹介したが、その続きになる。

射精障害の治療

この動画が面白かったので友人に教えたところ、
「なかなか射精障害の治療は難しそうですね」
という感想が返ってきた。

彼は加齢とともに、勃起はするものの射精までに時間がかかるようになって悩んでいる。
いわゆる「遅漏」だ。
私自身はというと、今のところなんとかなっているのだが、今後のことはわからない。
転ばぬ先の杖で泌尿器科の先生の動画を参考にまとめてみよう、そう思い立った次第である。

「テストステロンが下がって来ると射精障害が起こってくる」
泌尿器科の先生はこう力説する。
「なるほど、それならテストステロンを補充すれば、射精障害は治るということか」
早とちりしてはいけない。
この先生の語っている趣旨は
「加齢とともにテストステロン値が下がってしまう男性がいる。その場合にはテストステロンの補充が有用だ」
ということのようだからだ。

なおかつ、その有用性についてだが、
①寿命が延びる、点についてはエビデンスがあるが、
②射精障害の改善、に関してはエビデンスが出ていない、そういうことを解説している。
正直なところなんだかすっきりしない。

そりゃ寿命が延びるのは有難いことではあるのだが、射精障害の話じゃ無かったんですか?
まさに射精障害のごとくもどかしい。
元論文をPubmedで探して確認してみた。

寿命に関する論文はすぐに見つかった。
テストステロン補充療法:高リスク患者サブグループにおける死亡率との関連(Testosterone replacement therapy: association with mortality in high-risk patient subgroups)
なるほどその通リのことが書いてある。

ただ一点だけ。私は決して重箱の隅をつつくような性格では無いのだが、泌尿器科の先生は「死亡率2.3倍の差」と言っているが、論文を確認してみると、死亡リスク(ハザード比)が0.23なのである。

ハザード比というのは、例えばだが、ホルモン補充療法を行わなかった群の10年後の生存が100人で死亡が100人であった場合に、補充療法を行った群の生存が23人で死亡が100人であれば、0.23と計算される。だから死亡率で言うなら、100÷23=4.3倍になる。
まあ結論は変わらないが、2.3倍よりも4.3倍の方が景気が良い。

テストステロン補充療法

次に「テストステロン補充療法によって射精障害が改善されるか?」についてである。

この論文がどうしても見つからない。
たぶん私が見落としているだけだと思うのだが。
似た趣旨の論文は複数見つかったのだが、症例数が異なる。

例えば
性腺機能低下症の男性における射精障害に対する2%テストステロン溶液の影響(Impact of Testosterone Solution 2% on Ejaculatory Dysfunction in Hypogonadal Men)
では715人

性腺機能低下症の男性における長期テストステロン療法は、排尿機能、性機能、および生活の質(QOL)を改善する:対照レジストリ研究における傾向スコアマッチング・サブグループの解析結果(Long-Term Testosterone Therapy Improves Urinary and Sexual Function, and Quality of Life in Men with Hypogonadism: Results from a Propensity Matched Subgroup of a Controlled Registry Study)
では656人。

射精障害を伴うアンドロゲン欠乏症男性におけるテストステロン補充療法:無作為化比較試験(Testosterone Replacement in Androgen-Deficient Men With Ejaculatory Dysfunction: A Randomized Controlled Trial)
では76人についての調査がなされているが、「900人」ではない。

なおかつ、私が探した3つの論文のうち、上の2つでは有意差が出ている。
テストステロン補充療法が射精障害に有用だという結論だ。
最後の1つは「有意差無し」なのだが、追加解析で「補充療法を受けた男性」ではなく「補充療法によって血中テストステロン値が上昇した男性」に限定して検定すると有意であったようだ。
あくまで私が調べた限りでなのだが、テストステロン補充療法は、性機能改善に役立つという報告のほうが多い

なぜ泌尿器科の先生は、敢えて「はっきり有効とは言えない」と語っているのだろうか?
とても不思議である。
もし先生がこのコラムを見つけたら、そのあたりをコメント欄にでも書いて教えてくれると助かるのだが。

あくまで妄想だが、患者に過度に期待させないという臨床医的なスタンスかもしれない。
テストステロン補充療法を行うにあたって「寿命が延びますよ、射精障害が改善するかはわからないけど」のほうがクレームになりにくいだろう。
寿命が延びたかどうかは結局のところ本人にはわからないけど、射精障害はよくわかるので、改善しなかったら「寿命が延びるってのも出鱈目なんじゃないか?」と疑念を引き起こしかねない。

まあとにかくそういうことで、血中テストステロン値の低い人は、補充療法を行ったほうが良い。少なくとも寿命は延びそうだ

さっそく私も友人の医師にお願いして検査してもらうことにした。
テストステロン補充療法と言うのは簡単だ。アンドロゲルという薬を一日一回外用すれば良い。
オオサカ堂などの個人輸入代行サイトでも取り扱っている。

ところで血中テストステロン値が正常な男性がこれを使ったら、性機能は増大するのだろうか?
これも文献があった。
健康な若年男性におけるテストステロンの用量反応関係(Testosterone dose-response relationships in healthy young men)

結論から言うと、筋肉増強などの効果はあるものの、性欲増強などの効果は無かったようだ。
だから皆さん、早合点せずに、とにかくまずクリニックを受診してテストステロン値を確認してみましょう。
ネットで調べたら唾液を送って検査することも出来るらしい。

泌尿器科の先生は
「射精の瞬間に、ドーパミン、ベータエンドルフィン、オキシトシン、セロトニン、この4つが爆発的に出るんですね」
とも語っている。

もしそうなら、こういった物質を増加させる薬剤があれば、それは性機能を改善させるのではないか?
そう思って調べてみたら、やはり皆同じことを考えるようで、いくつかの薬で検証されていた。

脳内で放出されるドーパミンや物質の測定方法

それはそうと「脳内で放出されるドーパミンやセロトニンって、どうやって測定するのだろうか?」という素朴な疑問が湧いた。
調べてみると、マイクロダイアライシス法というラットを使った実験モデルがあるらしい。
ラットの脳に針のようなものを刺して、そこに液体を灌流させて、脳から分泌された微量な物質の濃度を測定するようだ。

挿絵のラットたちはこの実験の最中という趣向でした。

一方、オキシトシンや先回のコラムで紹介したプロラクチンなどは、脳の下垂体という部分から分泌されて血液中に放出される。なのでこれらは血中濃度として測定される。
それぞれの分泌は射精前後に順番がある。

これらのバランスが崩れると射精障害が起きるのだろう。
テストステロンの増減はこの系全体を強化したり減弱したりすると考えられる。
プロラクチンも含めた5物質の放出を経時的なグラフにまとめるとこんな感じだ。

たぶん脳内のドーパミンとセロトニンは車に例えるとそれぞれアクセルとブレーキのような働きをしている
オキシトシンは平滑筋に作用するので、射精の際の筋肉の動きなどに関係するのだろう。

とにかくこのドーパミンとセロトニンのバランスに働き、射精障害を改善させる薬剤を探したところ3つ見つかったので表にまとめてみた。

カベルゴリンとアマンタジンは日本で認可されているようだ。なのでお医者さんと相談した上で自費で購入できる。
ブプロピオンはが海外にしか無いので個人輸入になる。ネットで調べたら代行してくれるところがあるようだ。

フリバンセリンという薬もある。これもまたドーパミンを増加させる効果があり、女性の性欲増強に用いられるようだ。

なぜ女性限定なのだろう?
メカニズムからは性別関係なく男性には効きそうなのだが。
調べてみたのだが、はっきりしない。

動物実験では雄ラットの性交を促進する効果はあるにも関わらずである。
ひょっとしたら、開発当初から「女性の性欲を高める」というところにターゲットを置いていたため、薬効ではなくて商業的戦略によってそうなったのかもしれない。
もしそうなら、カベルゴリン・アマンタジン・ブプロピオンが女性にも効く可能性もある。

遅漏だけではなく、早漏に効果があるとされる薬もある。セロトニンを増やすことによる。

以上、いろいろ書きましたが、しつこく念を押しますが、私は決して専門家ではなく、理系出身という強みを生かして、自らの今後のパパ活ライフに生かすべく、ネットで調べてまとめただけの記事である。
御自身でも調べ直して、情報の活用は自己責任でお願いしますね。

■追記

私のテストステロン値は605ng/dLであった。年齢別平均値でいうと35才くらいである。なるほど元気なはずだ。

ちょっと思ったのだが、交際タイプAやB1にオファーしてお食事デートばかりして楽しんでる男性と、CやDにオファーしてがつがつ大人してる男性とでは、男性ホルモンの値に違いがあるのかもしれませんね。

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