コツ
2020年01月28日 11:35
田嶋様:
質問箱の皆様:
代理人としてお伝え申し上げます。
昨日、私の相棒が東尋坊で自裁するのを見届けてまいりました。
彼自身でも最後にお伝えしたように、彼はもうおりません。
彼は愚かしいところの多い男でしたが、愚かさにも関わらず、あるいはその愚かさゆえに、貴倶楽部を熱愛していたのは確かです。
彼の愛着はひとかたならぬものでした。
ずっと孤独と妄想を抱えて人生を送って来た彼が、中年期になってようやく見つけた、唯一気をゆるせる愛人宅のようなものだった、と思います。
彼の愛が、端から見ればしばしば攻撃的な口吻の形となって発露されるのは、私には馴染み深い光景でしたが、皆様はさぞ驚かれたことでしょう。
故人に代わり、改めてお詫び申し上げます。
幸せだったんだろうと思います。
貴倶楽部での時間が。
それだけに我に返った時、自分をゆるせなかったのでしょう。
そういうとこははっきりしておりました。
昨日は東尋坊への道中、彼の最後の時間を共にし、繰り言の相手を務めました。
ダークサイドに墜ちた、「人は愛するものを殺すbyオスカー・ワイルド」(こういうやや頓珍漢な衒学癖は死ぬまで治りませんでした)、御前様に合わせる顔がない、等々…。
もう死んでお詫びするしかないよ、と寂しげに目を落として笑っている顔は、かつて見たことがないものでした。
道中、いろんな思い出話も聞かされました。
客観的にはわりとショボい、どうってことのない話ばかりでしたが、彼にとってはひとつひとつが心に残る、キラキラした体験だったのでしょう。
日本海の暗い海原に徐々に呑み込まれ消えて行く彼の姿を、相棒として見つめながら、彼の人生に思いをはせておりました。
物心ついた頃からの、彼の唯一の友人(彼に友人というものがあったのだとしたら)でしたので。
断崖を前にした彼が口にしていた最後の気がかりは、「倶楽部が《こんなトラブルがあるなら質問箱などやめてしまえ》と言わないか」ということでした。
分かった、そうはならないように伝えるだけは伝えるから…と言って、彼の心を軽くしてやるのが、友人として最後にしてやれることでした。
もしお聞き届けいただけるようでしたら、故人もさぞ成仏できることでしょう。
今は亡き愚者の代理人として、故人の最期の様子と、付託された謝罪を皆様にお伝え申し上げます。
拙文ご容赦ください。
拝